賢い相続税対策!~生前に準備できること~


「うちには、相続税の申告なんて関係ないと思っていたのに、申告が必要なんですね。」
というお客様のご相談が増えてきました。

2015年の相続税法の改正により、相続税の非課税枠が「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」から「3,000万円+法定相続人の数×600万円」となったためです。

結果的に相続税がかかる人はおよそ2倍に増えました。

相続税対策として、生前に準備できるかどうかで納税額が大きく変わってきます。

・相続税がこれほどかかるなんて、知らなかった!

・仲の良かった家族が、「相続」の問題で「争族」に!

・生前に準備しておけば良かった!

このような後悔をしないために、相続の基本と生前に準備できる相続税対策を、わかりやすく解説します。

万が一という時にあわてることなく対処し、大事な家族と大切な財産を守る賢い相続対策を知っておきましょう。

【基本知識】相続の定義と相続税とは

亡くなったあとに財産を渡す場合は「相続」になります。

・亡くなった人を「被相続人
・財産をもらう人を「相続人

といいます。

財産がいくらあると相続税が発生するのか

相続する財産の金額が、下記の算式で求めた基礎控除額を超えた場合に、その超えた部分に相続税がかかります。

【算式】基礎控除額=3,000万円+600万円×※法定相続人の数

法定相続人の数によって基礎控除額は変わります。

※法定相続人とは、民法で定められた「亡くなった人の遺産を相続する人」のことです。配偶者がいる場合は常に法定相続人となりますが、それ以外は優先順位が高い人だけが法定相続人となります。

・第1順位 子(子がいなければ、子の子孫)
・第2順位 父母(父母がいなければ、祖父母)
・第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹がいなければ、兄弟姉妹の子)

第1順位の子供がいる場合には、第2順位の父母や祖父母、第3順位の兄弟姉妹は法定相続人になれません。

第1順位の子や孫がいない場合、第2順位の親や祖父母が法定相続人となります。

第1順位、第2順位がいない場合、第3順位の兄弟姉妹が法定相続人となります。

例えば、法定相続人が1人で、相続財産の金額が3,600万円以下であれば相続税を納める必要はありません。

このように法定相続人の数が多いほど、相続税の基礎控除額が増えることとなります。

例えば、孫を養子にして養子縁組により法定相続人の数を増やすことも可能です。

ただし、基礎控除額の計算上、法定相続人にカウントできる養子の数には制限があります。

実子がいる場合には養子は、1人まで
実子がいない場合には養子は2人までです。

自分の法定相続人が何人なのかを把握しましょう。

【基本知識】贈与とは

生きているときに財産を渡す行為を「贈与」といいます。

「贈与」とは、財産を渡す側の「あげます」という意思と、受ける側の「もらいます」という意思に基づいて、無償で財産の所有権を移転することをいいます。

【相続税対策でできること①】生前贈与のポイントと注意点

生前贈与は、早い段階で財産を把握でき、節税効果も期待できるもっとも確実な方法です

相続税は、被相続人が亡くなったときの保有財産にかかるので、少しでも減らしておくことが節税対策のポイントになります。

しかし、安易に行ってしまうと思わぬ税金がかかることもあるので、しっかり知識をつけて賢く相続税対策をする必要があります。

暦年贈与をする

贈与税には「年間110万円以下の贈与であれば、申告も納税も不要」という基本ルールがあります。

この基本ルールを利用して、少しずつ財産を贈与していく方法を暦年贈与といいます。

たとえば、子ども3人に贈与すれば、年間330万円まで非課税で財産を渡すことも可能です。

これを何年か繰り返せば、亡くなった時点での財産を1,000万円以上減額することが可能なのです。

ただし、贈与を受ける側は、何人から贈与を受けても年間で非課税となるのは、110万円までなので注意しましょう。

贈与契約書を作成する

口約束だと、贈与の事実が客観的にわかりづらく、贈与とみなされない場合があります。

暦年贈与を行う場合は、その都度「贈与契約書」を作成して、現金ではなく「預金口座」に振り込んで贈与の履歴を残すことをオススメします。

贈与のタイミングに気をつける

亡くなった日からさかのぼって3年以内にした贈与は、相続税の対象となります。

ただし、贈与を受けた人が孫や子どもの配偶者など法定相続人でなく、相続税の申告者でない場合は、3年さかのぼる必要はなく、相続税の対象にはなりません。

暦年贈与の注意点

贈与契約書は贈与をするたびに作成し、贈与する金額・日付は一定にしないようにしましょう。

たとえば、「忘れないように娘の誕生日に毎年110万円をあげよう!」など
毎年、同じ日に同じ金額を同じ人に贈与すると、定期贈与とみなされ、定期贈与の総額に贈与税がかかる場合があります。

贈与契約書を最初の1回にまとめてしまった場合も同じです。
「はじめから節税対策のために計画的に行っているもの」と思われるからです。

教育資金の一括贈与の非課税の特例を利用する

父母や祖父母などの直系尊属から30歳未満の人が教育資金の一括贈与を受けた場合、1,500万円までの金額は贈与税がかかりません(期限:2023(令和5)年3月31日まで)。

ここでいう教育資金には、入学金や授業料だけでなく、塾やピアノ教室など学校以外の習い事に対して支払うものも含まれます。ただし、学校等以外に支払うものについては500万円まで、かつ、23歳未満への贈与が非課税となります。また、受贈者のその贈与の前年分の所得が1,000万円超の場合は非課税の対象外となります。

金融機関等との一定の契約に基づき、専用口座を開設し、教育資金を入金(贈与)し、領収書等を提出して教育資金を引き出します。

契約期間中に祖父母等の贈与者が死亡した場合には、一定の事由に該当する場合※を除き、残額が相続税の課税対象となります。
 
※贈与を受けた孫等が贈与者の死亡の時点で①23歳未満である場合②学校等に在学中である場合③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合

30歳になった時点(30歳になった時点で学校等に在学している場合、毎年金融機関等に届出た場合には40歳になった時点)で残額がある場合は、その残額に対し贈与税がかかります。

そもそも、教育資金等の「都度贈与」は贈与税がかかりません。

都度贈与」とは、父母や祖父母などの直系尊属から教育資金や生活費のうち、通常必要と認められるものを、その都度贈与することをいいます。

例えば、祖父母が孫の入学金や家賃をその都度支払ったとしても、贈与税はかかりません。

教育資金が必要なときに、都度贈与しようと思っても、もし亡くなってしまったら保有財産は相続税の課税対象となってしまいます。

条件はいくつかありますが、この制度を利用することで、生前に一括で非課税贈与することが可能です。

暦年贈与・都度贈与・教育資金の一括贈与の非課税の特例を時期や条件などの使いやすさなど検討し、使い分けるとよいでしょう。

相続時精算課税制度を利用する

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対して贈与しても、2,500万円までなら贈与税がかからない制度です。2,500万円を超えた部分に対して20%の贈与税がかかりますが、相続のとき(亡くなったとき)に、贈与を受けた財産を相続財産に含めて相続税額を計算し、その相続税額からすでに納めた贈与税額が差し引かれる仕組みとなっています。

この制度を利用するためには、一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

業績好調な自社株式や収益性の高い不動産など、将来的に値上がり期待できる財産や高収益を生む不動産を、早期に贈与することで、相続時の値上がり分や貯蓄を回避することもできます。

ただし、相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税(年間110万円まで非課税)の利用ができなくなるので、慎重に検討する必要があります。

事前にお墓を購入する

被相続人が生前にお墓などを購入しておけば、相続財産を減らすことが出来ます。

「祭祀財産(さいしざいさん)」=仏壇や仏具、お墓などの祖先をまつるための財産には、相続税がかからないからです。

ただし、あきらかに相続税対策として購入したであろう高価な仏像や転売目的とみられるものは相続税の対象財産となってしまいます。

また、被相続人が亡くなったあとで、お墓を購入しても相続財産から控除はされませんので注意が必要です。

祖父母から孫へ贈与するときの注意点

受け取る側の意思が示されていないと、贈与は認められないため注意してください。

たとえば、祖母が孫名義の預金通帳を作成して、お金を振り込むケースです。

この場合、祖母が通帳や印鑑、キャッシュカードを持ったままでは、孫はその預金を自由に引き出すことはできません。

孫は、お金が振り込まれたことさえ知らないかもしれません。

これでは、受け取る側の意思が示されておらず、贈与は認められないのです。

このままでは、祖母と名義の違い預金通帳ですが、祖母の財産のままですので、祖母が亡くなったときに相続税の課税対象となります。

孫が自ら管理し、自由にお金を使える状態であれば、双方の合意が認められ贈与が成立します。

【相続対策でできること②】新常識!認知症には家族信託で備える

家族信託とは、信頼できる家族に財産管理を信じて託すことです。

『人生100年時代』となった今、認知症患者は急増しています。

認知機能の低下などで大事な財産が、一部の相続人の使い込みや詐欺にあったりしないように守ることもできます。

認知症になると生前対策ができなくなる

「認知症」で判断能力がなくなると

・預貯金の引き出しや解約
・不動産の修繕や売却
・遺言書の作成など

契約行為が出来なくなってしまいます。

三者構造で成り立つ家族信託の仕組み

家族信託は

・財産を託す人(委託者
・財産を託された人(受託者
・託された財産から得た利益を受け取る人(受益者

の三者構造で成り立っていますが、委託者と受益者は同じであることが多いです。

委託者と受益者が同一にならない場合、贈与税がかかることがあるため、注意が必要です。

親が自分のアパートなどの財産運用を子に任せて、家賃収入は、従前のとおり親のものにすることができます。

家族信託のすすめ方

信託契約については、予想外の問題が起これないように、精通した専門家に相談するのがよいでしょう。

その相談者の状況に応じて、相続対策や争族対策を踏まえながら契約書の案を作成したり、公証役場への手配をしてくれ、委託者ご本人やご家族の負担を減らすお手伝いをしてくれます。

相続税対策は生前贈与で賢く備えよう

賢い相続税対策をするには、生前に準備することが重要です。

相続が開始した後では、有効な対策がほとんどないからです。

最近は、「終活」という言葉を耳にする機会が増えましたが「わからないまま、知らないまま」だと損をする時代です。

生前準備は、大切な家族がずっと仲良く円満に暮らしていくための準備でもあります。

相続税のことで、相談したいことや不安なことがある方は、相続税対策や家族信託に精通している幣事務所へ是非お声がけください。