名義預金とは?税務署から指摘される可能性大!申告しないとペナルティも!

名義預金とは「被相続人名義ではないが相続税の課税対象となる預金」のこと

例えば、被相続人である父が子のために預金口座を作成し、その子名義で預金をしたなどのケースがあります。

名義預金は、被相続人の名義と預金口座の名義が一致しないため、申告漏れが起こりがちです。そして、このことを税務署も理解しているため、名義預金の有無は指摘されやすいです。そのため、申告漏れが起きないように対策しないと、重加算税または過少申告加算税が課せられてしまいます。

名義預金でよくあるケース

名義預金の中でも特に多いのが、次の2つのケースです。

• 妻名義の預金
• 子どもや孫名義の預金

では、それぞれについて見ていきましょう。

妻名義の預金

妻名義の預金は、名義預金となるかどうかの判定が難しいです。なぜなら、妻の固有財産の確定や、管理状況の把握に大きな労力を要するためです。名義預金となるかどうかは、以下の3つのポイントについて考慮する必要があります。

1. 妻の過去の固有収入
2. 生活費などの負担者
3. 相続開始前に夫婦間で移動された資金

妻の過去の固有収入は、名義預金から除外できます。なぜなら、明確に夫の財産でないと判断できるためです。妻の固有収入として認められるものには、以下のものなどがあります。

• 妻の両親などからの遺産
• 妻の公的年金の蓄積
• 妻の労働収入や不動産の賃貸や売却収入
• 夫などから適正な手続きにより受けた贈与
• 結婚持参金

生活費については、誰が負担者になるのかによって名義預金の金額が変わります。

相続開始前に夫婦間で移動された資金も、名義預金の算出に関わります。例えば夫が死亡する前に、夫の口座から妻の口座に資金移動した場合、その分は夫の資産と見なされるのが普通です。この際に資金の管理を妻がおこなっていたとしても、真の資産の所有者は夫と見なされます。

子や孫名義の預金

子や孫名義預金も、名義預金となり得ます。例えば、被相続人が死亡したあとに子や孫が自分名義の預金があると知った場合は、典型的な名義預金です。

ただ、子や孫が被相続人の生前から預金の存在を知っており、いつでも使えるような状況であった場合は判定が分かれます。判定のポイントは、被相続人から子や孫名義の贈与が成立していたかどうかです。もし贈与が成立していれば名義預金には含まず、成立していない場合は名義預金に含めます。

贈与成立のポイントは、下記のとおりです。これら全てに該当する場合は、贈与が成立していることになります。

• 適切な贈与契約書があるか
• 名義人(子や孫)は口座の存在を知っていて自由に引き出すことができたか
• 口座の印鑑は被相続人が使っていた印鑑とは別の印鑑であるか
• 通帳やキャッシュカード、印鑑の管理者が名義人(子・孫)自身であるか

名義預金の判定基準

名義預金の判定基準は、以下のとおりです。

• 出捐者(しゅつえんしゃ)
• 預金行為者
• 管理・運用者
• 利益の享受者
• 処分者
• 出捐者、名義人、管理・運用者との関係
• 贈与の有無

では、それぞれについて解説します。

出捐者(しゅつえんしゃ)

出捐者とは、預金の原資を拠出した人のことです。例えば口座が妻名義であっても、税務署は「預金の原資は被相続人である」として名義預金に該当すると指摘してくることがあります。

預金行為者

預金行為者とは、口座開設手続きをおこなった人のことです。誰が手続きをおこなったのかは、書類の筆跡などから判断します。

管理・運用者

口座における管理・運用とは、通帳や印鑑の管理、保管と預貯金の出し入れなどのことです。これらを誰がおこなっているのかによって、名義預金に該当するかどうかの判断結果が異なります。例えば、被相続人と相続人の銀行印が同じである場合は、名義預金と判断される可能性が高まります。

利益の享受者

利益の享受者とは、預金の場合は利息、株式であれば配当金といったものが該当し、これらを受け取っている者のことです。利益の享受者が誰であるのかによって、名義預金に該当するかどうかが変わります。

処分者

財産の処分とは、預金の解約や、株式や不動産の売買契約などのことです。処分者は、これらがおこなわれた経緯から判断されます。

出捐者、名義人、管理・運用者との関係

出捐者、名義人、管理・運用者との関係は、さまざまな事情から判断されます。例えば、相続人が財産の管理・運用をした理由や、被相続人が指示を出していたのかなどが判断基準として挙げられます。

贈与の有無

もし贈与が適切におこなわれていた場合は、該当する財産は贈与税の対象となるため、相続税における名義預金には該当しません。ただし贈与が適切におこなわれていた場合でも、贈与の申告が漏れていた場合、贈与の事実の立証が難しくなります。

税務署は名義預金の存在を把握している

名義預金の申告漏れが指摘され、追徴課税となるケースは多いです。なぜなら、税務署は名義預金の申告漏れが起こりやすいことを把握しているため、多くの税金を取るべくしっかり見てくるからです。名義預金の存在が明らかになりやすい理由として、次の2点があります。

• 親族名義の財産も調査の対象となる
• 税務署は被相続人や親族の過去の収入を知っている

税務署は税務調査先を選ぶ際、被相続人名義の財産のみではなく、その親族名義の財産も必ず調査します。そのため、財産名義と被相続人名義が一致していなくても、税務署は把握できます。

また、税務署は被相続人や親族の過去の収入まで把握しています。そのため、被相続人が死亡した際はどのくらいの遺産がありそうかと当たりをつけることが可能です。したがって、税務署の予想よりも遺産が少ない場合は、他に名義預金がないかどうかを疑ってきます。

名義預金を申告しなかった場合のペナルティ

名義預金の申告漏れが発生した場合、本来納付すべき税額に加えてペナルティが課せられます。ペナルティの内容は、下記の表のとおりです。

ペナルティの種類 状況 税率
過少申告加算税 当初の納付相続税額または50万円のいずれか多い方以下の部分 10%
過少申告加算税 当初の納付相続税額または50万円のいずれか多い方を超える部分 15%
無申告加算税 50万円以下の部分 15%
無申告加算税 50万円を超える部分 20%
重加算税 過少申告の場合 35%
重加算税 無申告の場合 40%
延滞税 納付期限から2ヶ月以内 2.4%(令和4年度)
延滞税 納付期限から2ヶ月超 8.7%(令和4年度)

名義預金だと判断されない方法

名義預金と判断されるには条件があるように、逆に判断されないようにする方法もあります。それは単純にいえば、名義人と実質的な所有者を一致させることです。

例えば、自分の収入は家族名義ではなく、自分名義にしておくことが挙げられます。もしどうしても家族名義にしたい場合は、贈与の事実を明確にしましょう。

まとめ

名義預金は故意に隠そうとしてなくても、気づかずに申告漏れをしてしまうことがよくあるため、注意が必要です。申告漏れをしないように対策するのも良いですが、そもそも名義預金だと判断されないようにすることが有効です。税務署からペナルティを課せられることがないよう、名義預金のことはしっかりと頭に入れておきましょう。